6月 木々の向こうの森のおく

学校は夏休みにはいり、街の光景のそこここに子供たちがいる。朝でも昼でも夜でも。そう、夜なのに小さな子供たちを見かけるのだ。それも大はしゃぎしてたりする。白夜で四六時中明るいと、時計を見ていなければ一日のリズムはめちゃくちゃ。おまけに太陽の力なのか、眠る時間が少なくても元気だし、大人だけじゃなくって真夜中に鳥がさえずり牛が草を食んでいるようなフィンランドの夏だ。子供が真夜中にはしゃいでいても仕方ないのかもしれない。さいわい今は夏休み。だからか、大人が無理やり寝かせることもあまりない。眠れるときに寝ればいい、そんな感じなのだろうか。

 

 

ぐっすり寝るには森がいいみたい。少なくとも私はそう。いつもよりずっと澄んだ空気を吸うと気持ちよく眠くなり、そして深い眠りにつける。

 

 

森の中は勢いよく新緑が育っている。そして一気に花も咲きだした。日本のようにひとつ、またひとつと時を待って色んな花が少しずつ咲いていくのと違い、いろんな花が一斉に咲き出すのだ。森のところどころで花の香りがむんむんと漂う。そして新緑の、木々の匂いに包まれる。くねくねと気ままに歩けば場所によって少しずつその匂いが移ろう。たとえば白樺の葉やずずらん、もみの木の新芽、場所をかえてそれぞれが特に強く香る。

 

 

そんな香りは目に見えない木々の向こうの森の様子を思い描かせてくれる。遠くの森の奥深くのことを匂いに導かれながら想像することの楽しさ。木漏れ日を浴びる小さな草花、木陰のひんやりとした空気の冷たさまで伝わってくるようだ。自分で歩いて五感で味わった森が、どんどん心の中で成長してできた森。

 

 

そんな私だけの森は、なんとも心地よい。森歩きした日の夜は、いつものベッドで寝ても森の余韻が部屋に満ちている。ふっとあの森の中の空気がよみがえる。匂いに導かれながら森のようすを思い出して、澄んだ空気を感じながら眠る。夏はこれからが本番です。

 

(文章・写真 森下圭子)

北極圏まで行かないまでも、ヘルシンキから列車で3時間ほど北へ行けばこんなに明るい真夜中が待っている。

夏の醍醐味。焚き火、やかんコーヒー、そしてソーセージ焼き。それにしてもこのソーセージの数……。

花をさかせたブルーベりーはこんな感じにまでなりました。あとは熟すのみ。どうかお天気に恵まれますように。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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