2月 雪とソリの子守唄

家の近くにちょっとした丘がある。暗闇のなかを一人またひとりとソリで滑り降りていく様子はとても楽しそうだ。組み合わせはだいたいお父さんと子供。見ていると、なんだかお父さんのほうが張り切っているようにも見える。そしてお父さんは「この坂はオレサマだけのもの」と言わんばかりに、全員が違う方向に向かって滑りおりていくのだ。てっぺんは一つ、でも行く先は自由。この奔放な感じ、見ているほうまで楽しくさせてくれる。

 

 

先日友人に誘われてソリ滑りピクニックをした。ヘルシンキ市がきちんと管理しているソリ滑り専用の丘がある。オフィシャルな堅苦しい感じはいかに……と覚悟して行ったのだけど、それはそれは微笑ましい光景だった。近所の丘と変わらないのだ。人々は好きな方へ滑り下りていき、そして好きなところを歩いて登ってくる。危ないからと前もって規則を作るのでなく、臨機応変に自分が判断していけばいい。なんともフィンランドらしい。よく見れば、坂の途中みたいなところにしゃがんでホットチョコレートで休憩してる親子までいる。誰の森でも自由に入りベリーを摘んだり茸狩りしていいし、森で見つけたゴミは当然のように拾う。皆で自然を共有しながら自分らしく生きる、そんな人たちらしいソリ滑りの光景だなあと思った。ソリの現場は自分を取り戻す大切な場所なのかもしれない。

 

 

さあ、お家へ帰ろうか…子供たちはそのままソリに乗っている。そう、ソリをひいてもらって雪道を帰るのだ。雪と氷で覆われた歩道はデコボコしている。また人がひっきりなしに行き来する。そんな中でソリに座っているのって、実は怖いんじゃないかと思ったことがある。行き交う人々の足ばかりがあたりを取り囲み、デコボコ道はソリを上下に揺すり子供は飛び出してしまいそうだ。大人たちに聞いてみると、とても心地いいんだと皆が答える。大人になってもあの頃の音や気持ちの良い感覚が残っているよと口をそろえて言うのだ。ソリの中に響く音と体に伝わる振動がとて心地良いらしい。澄んだ空気と心地よい空間は素晴らしい時間だという。長い長い冬も辛いばかりじゃない。素敵な時間がいろんなところにちりばめられているのだ。

 

(文章・写真 森下圭子)

-15℃くらいになると、工場の煙が雲のように見える。じっとそこに留まる、煙はそのままの形でそこに凍ってしまったよう。

これだけ広いソリ滑りの丘で人々が気ままに行き来する感じはなんとも微笑ましい。

キリリと冷たい空気の中で見る夕日はなんだか特別な気がする。心を奪われふらりと夕日を追っていくと、同じような人が集まっていることが多い。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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