3月 春の匂い、春の手ざわり

まっすぐに顔に差し込んでくる太陽の日差しを手でさえぎるようになったとき、空気の中には春がふわふわと漂いはじめている。眩しすぎる日差しに目を細めながら、ふと深く息を吸う。頬にあたる陽のぬくもり、鼻をくすぐるこの感じ、そうだ、この匂いは春だ。まだ冷たい風のなかに混ざって鼻をくすぐっていくものは、ぽかぽかしている。陽だまりのような匂いだ。フィンランドで春だなと思うのはいつだってこんな風で、朝晩は-10℃になるようなまだまだ寒い毎日の中でも、人びとは、敏感に春を探し出している。

 

 

動物園のクマも冬眠から目覚めた。今年は随分と長いこと雪景色が続いていたから、もう何ヶ月ぶりだろうか......道路のアスファルトが顔を出していることが新鮮だ。凍てついた海や湖には、散歩おさめとばかりに人が繰り出して歩いている。歩いているだけじゃない、釣りはもちろん、スキーやスケート、自転車を飛ばしている人たちまでいる。あの長くて暗くて寒かった冬には、なんとか自分の気持ちを前向きにしたくてやってたアウトドアのあれこれも、今は冬を惜しむかのような様子になっている。あの時はやっとの思いだったアウトドアのあれこれは、春の匂いが風にのってやってくる中では、人は目が合うとなんとなく微笑みあい、やわらかく挨拶の言葉を交わしたりもする。

 

 

青空が広がる日が増えた。太陽の光の中で過ごせる時間が長くなった。少しずつ春と一緒にいろんなことが動き始めている。木々の並ぶところを見ると、木々の枝がふわりと緑色の空気をまとっているように思えるようにもなってきた。もう少ししたら木々も芽吹き、鳥の歌声もずっと増えてくれる。街を歩く人たちも、やがて毛糸の帽子を脱いでマフラーや手袋をはずし、少しずつ身軽になる。少ししたら森へ行こう。この長い冬の間じっと雪の下で眠っていたクランベリーやリンゴンベリーを摘みに行こうと思う。雪や氷を指でかきながらのキツイ作業だけれど、熟したベリーの深い味わいやこの時期だから敏感に感じられる春の陽のぬくもりは何ものにも代えがたい。

 

(文章・写真 森下圭子)

春がやってくる。氷が厚い今のうちに、存分に海の上を歩いておこう。

もともと冬といえば根菜ばかりが食卓にのぼったフィンランド。でも工夫ひとつでいろんな楽しみ方がある。秋に摘んだきのこのソースをかけてとびきりの一品に。

青空の広がる日が増えた。空の青も少しずつ濃くなってきている。この空気の中に春がふわふわと漂っている。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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