8月 車まわりのフィンランド

片道7時間かけて小さな町へ行った。日没まであと1時間もないくらいの時間、町なかにあるスーパーの大きな駐車場には車が集い始めていた。その晩はとくにひどかったそうだけれど、いつまでも車の騒音が聞こえてきた。他に娯楽がないじゃない?と地元の人たちは言い、これが地方の小さな町によくある若者たちの遊び方なのだと言った。

 

 

世界ラリー選手権のフィンランド・ラリーが8月初頭にあった。私が訪れた町はそのラリーのルートに入っている。ラリーの週末は道端に一家で椅子を並べ、通り過ぎる車を待ちわびていたり、あちこちに屋台がたっていた。大きな世界のイベントがこんな身近なところにあって、おまけにフィンランドからは優秀なドライバーが次々と輩出されている。地方の青年たちが、いつか自分もなどと夢を抱くサマも、なんとなく想像がつく。

 

 

地方のサービスエリアではタクシーの運転手たちが好んで食べるメニューというのがあったり、ヘルシンキではタクシーの運転手が一番美味しいホットドッグ屋を知っていると言われている。そしてどちらの場所もそれぞれ大勢の人たちがふらりと立ち寄る場所。車じたいが身近ではあるけれど、フィンランドでは、タクシー運転手の存在を日常の場面で意識することが多いと思う。

 

 

おとといタクシーに乗ったところ、メーターの下に2ユーロ硬貨が貼り付けてあった。何かと思って聞いてみたら、タクシー運転手たの古くからの慣わしなのだという。新しい車で最初に乗せたお客さんの料金はそれがいくらの乗車でも硬貨1枚だけをお願いする。この車に最初に乗ったお客さんが持っていた硬貨は2ユーロだったそうだ。硬貨はその車にずっと飾っておく。以前の車それぞれの硬貨は大切に家に飾っているという。それを眺めながら、今日も安全でいい仕事ができるようにと願い、家を出る。

 

(文章・写真 森下圭子)

湖水地方に暮らす地元の人すら足をとめ、カメラを向けた夕焼け。

湖水地方では5分ほど歩いただけで次の湖にたどりつくことも。日が沈んだ後の静かな風景。

車窓からの眺め。湖ばかり森ばかりと思っていても、雲や光の色で刻々と景色は変わる。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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