8月 一番星のタイミング
8月も終わりになるとイベントなどで花火が打ち上げられる。夜空に輝く大玉の花火はなんとも美しいのだけれど、寂しさがじわじわと心にひろがっていく。それがまるで夏の終わりを告げているように感じてしまうから。
フィンランドの夏の夜は明るい。いつまでも沈まない太陽の恵みで育った滋味豊かな苺や野菜に喜び、外で遊ぶ。ところが8月にはいり、ふと夜に闇が戻ってきたことに気づき、同時にまだ闇を受け入れたくないような気持ちになる。闇の来る前に寝て、目がさめたら空が明るいという状況をつくって、なんとか白夜気分でいたいなあなんて思ってみたり。悪あがきなのは分かるのだけれど、本当に短い北欧の夏を一日でも長く暮らしたいのだ。
夜空に闇が戻ってきたのを実感するのは星。明るい空には見ることのなかった星が目に入ったら、もうその夜は闇に包まれているのだ。何も考えずに空を見上げて星を見てしまったときは、気持ちの準備もないところで寂しさを越えて落ち込んでしまうことだってある。今年はずいぶんと意識して夜空をみないでいた。星空を見るタイミングは大切だ、どうしよう。そんな時に流星群のニュースを聞いて「ここだ!」と思った。空を見上げても流星群を見ることはなかった。けれども漆黒の闇夜が夜空に戻っていて、空いちめんに星がまばたいていた。美しい。この17年で、ひょっとすると一番冷静に空をじっくり見ながら夏の終わりをかみしめたかもしれない。
さいわい今年はバランスよく雨が降ったり日が照ったりしてくれていて、森に入れば大粒のおいしいベリーやきのこがあちこちにある。秋も存分に楽しまなくちゃ。空も風もどことなく秋になっているこの時期。それでも差し込む光はまだ夏の眩しさを思わせる太陽。夏と秋が行ったり来たり、混ざり合ったりしているこの時期は、街にも森にも独特の匂いがある。
夏の終わりは空がコロコロと変わる。ひがな一日、雲を眺めていたいくらいに。
ブルーベリーの時期もそろそろ終わりかな、というころに登場するのがリンゴンベリー。赤い実はすこし秋を先取りしたかのよう。
森で夢中になって摘んだバケツいっぱいのブルーベリー。葉っぱやゴミを取り除くこのあとの作業が大変なのだ。