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11月 あたたかな秋

街角で友人と立ち話をしていたら新聞記者に呼び止められた。なにかと思えば、50年ぶりの暖かい秋をどう過ごしていますか?という質問だった。私も友人も存分にきのこ狩りを楽しんでいたので満喫ですなんて答えた。翌日その新聞の街頭インタビューを見てみたら、他の人たちもみんなこの秋を楽しんだ様子だった。

気になったので一年前の写真を調べてみたら、きのこ狩りを企てたのに大雪が降ってしまって、空のバケツを手に森を歩く写真(きのこが雪に隠れていると知りながらバケツを持って森に入る意地っぱりぶりに苦笑)があった。今年は今だにバケツ一杯のきのこが摘める。きのこにちょうどいい気温と雨が続いているからだろう。

11月はフィンランドで精神的に一番辛い時期。何もかもが億劫になったり、気持ちが沈む状態が何日か続く。どんなに暖かい秋だろうが、結局これはやってきた。今年は身軽に外出しやすかったので、森に行くことも街を散歩することも多かったはず。でもやってきた。何もかもが面倒くさい、いつだって眠い、そして家に篭りがちになる。日照時間が極端に短いだけでなく、晴れる日がほとんどない。目に入る風景はいつもどんよりしているか暗いか。どんなに暖かくても、太陽が見られないそのことの辛さは圧倒的なのだ。

いよいよフィンランドでもクリスマスのライトアップが始まり、街はクリスマスを待つ明るさに彩られている。クリスマスはもうすぐ。クリスマスが過ぎればまた日照時間が長くなる。少し気分が楽になり、友人たちとも「クリスマスがあってくれてよかったよね。」と気分が滅入っていた11月のことを語りあうようになる。すっきりと朝を迎えるため、今朝もシナモンとカルダモンを加えたコーヒーをいれる。これはクリスマスコーヒー、部屋にふわっと広がるスパイスの香りが、クリスマスのわくわくを連れてきてくれる。「雪、ちゃんと降ってくれるかなあ」…最近はよくそんな話になる。冬は雪景色の美しい日々をつい期待してしまうのだ。

長らく修復が続いていたオリンピックタワーがやっとオープンになりました。ここからの眺めが好きで散歩がてらに行ったりします。

外のカフェは冬ごもり。次の春までおやすみです。

森の中でのピクニックだって、焚き火があれば暖をとりながらしばらくゆっくりできます。フィンランドの定番といえばソーセージ。マスタードをつけていただきます。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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