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7月 きのこの森、ベリーの森

今年は6月にブルーベリーの摘み頃を迎えた地域があり、あるところは雨続き、そうかと思えばとある村では日照り続き。場所によってまったく違う夏を迎えてここまできた。雨の多いところでは、すでに山鳥茸や杏子茸の茸狩りというし、いまいる田舎では7月も終わりになって、やっとブルーベリーが摘み頃になったという。

 

今年はそれが理由ではないだろうけれど、森の中のサマーハウスでゆったり夏休みを暮らす人より、なぜかフィンランド国内を縦横無尽に移動している友人たちが多い。浜辺で数日遊んで、湖を船で渡り、島から島へと巡ったり。きのこでもベリーでもいい、旅の途中に見つけた森の恵みを少しだけ摘んで、そしてその日の夕飯にする。小さな村にはレストランもなく、小さな店ではじゃがいもとにんじん、玉ねぎくらいしか手に入らないかもしれない。でも、体を動かして疲れて、シンプルだけどその日に見つけた森の恵みをいただくというのは、何と幸せなことだろう。

 

森の恵みをいただきながら、全国を縦横無尽に移動しているのは人間だけではない。クマは冬眠の前にベリーを求めて数百kmも移動することがあるというし、鹿やヘラジカは海を泳ぐことだってある。夜明け前の薄暗い時間に車を走らせると、畑を横切るヘラジカや、森に向かうキツネや野ウサギをみかけることもある。ブルーベリーは鳥たちも大好きだ。ラップランドではトナカイたちが食べるためにと、サーメの人たちはあえて茸をあまり採らないという。そうでなくてもまだ摘みごろでないベリーや小さな茸は次に来る人たちにおいておいたりもする。

フィンランドの森にいるのが気持ちいいのは、きれいな空気や水、木々や草花に囲まれているというだけでなく、この生きるもの同士がうまいこと共存し合っている、その感じも欠かせないのだと思う。

久しぶりの雨に息を吹き返したように瑞々しくなった森。

ブルーベリーは犬も大好き。実はこのブルーベリーの場所は犬が案内してくれました。

夏になるとファームに小さなお友達が増える。ひつじ、やぎ、ねこ、犬、久しぶりに遊びにいく夏のファームは賑やかで楽しかった。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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