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6月 長い夏休みのまえに

夏至祭を境にフィンランドの首都ヘルシンキの街は様子が変わる。大人の多くも夏休みに入り、たとえば陶器アラビアの工場などは窯の火を消して工場スタッフ全員が同時に休暇をとる。4~5週間の夏休み、人々は自然のただ中へ向かう。ヘルシンキには地方から夏休みで遊びにきたフィンランド人一家や外国人観光客で賑わい、地元の人たちはなりをひそめる。普段は住宅街の路上にずらりと駐車されている車たちも旅立ち、道路ががらんとしている。海へ行く人や森へ行く人、そして船や夏小屋での暮らしが始まる。いつもと全く違うライフスタイルが、自分を日常からうまく切り離してくれ、日々の疲れを癒してくれるのだ。

そんな夏休みの前は会社の皆で食事にでたり遊びにいったり、夏休みのあいだは友達すらなかなか会わなくなるので、友達と一緒に食事をしたりする日々で忙しくなる。長い夏休みの前で仕事の整理で忙しいけれど、こうした時間は譲れないのだ。仕事のあとに島へ行ってはバーベキューをしたり、島のレストランでちょっと豪華なお食事をしたり。いつまでも日の暮れない白夜の空の下、仲間たちと公園ピクニックしている人たち、カフェのテラスでいつまでも談笑しているグループをあちこちで見かける。

 

これで一区切り、そして思い切りリフレッシュして、また夏の終わりに職場に戻る。家路に向かう人たちの顔はいずれもすがすがしく、向こうの空から響くかもめの鳴き声が休暇のムードを一層高めてくれる。大人が休暇の間、お店や公共の施設、新聞やテレビまで大人の代わりをつとめるのは学生さんたちだ。彼らの初々しく元気な姿が、ヘルシンキの街のあちこちで見受けられる。今年は久しぶりに夏のほとんどをヘルシンキで過ごす予定だ。地元の人をあまり見かけない街の暮らしがどんなものなのか、ヘルシンキの中でどう大自然を満喫しようか、それはそれで楽しみだ。

緑は今も刻々と濃くなっていく。湖の水面に映る景色も色鮮やかで夏らしい。

森にはブルーベリーの実り具合をチェックしている人も。あとは色づいていくばかり。今からワクワクしてしまう。

ヘルシンキは海から眺める街並みが特に好き。冬は凍った海の上から、夏は小さな船に乗って。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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