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1月 雪あかりと冬の笑顔

雪深い静かな景色の中を人々が行き来する。きりりと寒い-5℃くらいの中では、地面の雪はさらさらのまま。風と一緒に地面の雪が舞い上がったり吹き寄せられたりを繰り返し、雪原にはゆるやかなでこぼこと波のような雪紋がひろがる。雪を踏むごとに足の下から聞こえてくるキシキシとくぐもった雪の音。少し控えめだけど歯切れのよい音は心地よく、気づけばリズムをとりながら歩いている。すっかり楽しくなってしまうのだ。そういえば雪深くなればなるほど、森の中を散歩している人も凍った海の上を歩いている人たちも、その足どりは軽くなってる気がする。

積った雪はふわっふわに見える。間近でみてすらそうだ。綿菓子は言い過ぎかもしれないけれど、口の中でさっととける甘いお菓子のようで食べたい衝動にかられ、時おりふと雪をすくって口の中に放りこんでしまうほど。ぎゅっと握ってもさらさらのままの雪では雪だるまも雪合戦もできないけれど、風ひとつで刻々と変化する雪景色はいつだって新鮮。そして雪の白はぽっと優しくそこここを照らしてくれる。わずかな日照時間でも日の名残が雪の中に浸み込んでくれているようで、それが夜になっても辺りをほんのり明るくしてくれているのかもしれない。雪あかりの中を心はずませて歩いていると自然と笑顔がこぼれ、人とすれ違うときも微笑みながら一言ふたこと言葉を交わすようになる。

雪が降りやっと北国らしい冬がやってきて、寒さすら嬉しい。雪かきは大変だけど、スケートやらスキーやら冬の楽しみもたくさん待っている。雪深い風景の中にあって活気というものをひしひしと感じる毎日だ。そんな中でいま大統領選が大いに盛り上がっている。直接選挙ということ、人口が540万ほどの小国ということもあるのか、自分の1票が歴史を担うという自覚をもって投票しているように見える。お互いがなぜその人を推すのかをフェイスブックで伝え合ったり、候補者にあったときの自分の感想を報告しあったり。その人が大統領になればどんな社会が可能か、こんな未来がやってきてくれたら、そんな風に話しは続く。冬が永遠に続くかと思われた日々が信じられないほど、いま、春は確実にそこここに気配を忍ばせ始めている。

元旦のお昼どき。あっけなく沈もうとする太陽と薄く氷のはった海。

雪はまたたく間につもり、一晩で真っ白になったある日の朝。

除雪車が忙しく行き来するほど、雪は急に降りだし積もりだした。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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