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5月 夏の体内時計、夏に生きる風景

5月に雪が降った。さすがに5月に降られると、驚きとウンザリと、でもちょっともの珍しいからウキウキする部分もあって。ただ雪が降った、それだけのことだけれど、なんだか毎年のように5月の雪にはいろんな思いが入り混じる。そう、実は毎年のように5月に1度は雪が降っているのだ。なのにいつも新鮮な気分で5月の雪を迎えているのもちょっと面白い。

5月になると街の風景が一気に明るくなる。公園にはまた花が植えられ、街角にはテラスが並ぶ。公園や海辺でさえずり歌う鳥たちが、テラスの辺りでは虎視眈々と残り物(ともすれば食べてるところを奪うくらいの気持ちで)を狙っている。人々の服装はこころなしか明るい色になり、卒業の季節が近づき若者たちは少し背伸びをした格好で、半分照れくさそうにしてあちこちを歩いている。

 

一気に活気を取り戻す5月。つられてヒトの気持ちもぐんぐん高まる。あれ?もう12時?なんて真夜中を迎える日も多い。そうなのだ、暗くなる時間がとても遅くなっているのだ。そしてなぜか太陽をいっぱい浴びていると元気に真夜中を迎えていたりするのだ。電気を消し忘れて平気で眠れるのに、太陽がでていると眠れない。眠れないというより、寝なくていいと言ったほうが正確かもしれない。きっと体にはよくないんだろうな、と思ってはいるけれどつい少ない睡眠時間であれやこれやと忙しくしてしまう。逆に冬は一日中寝ていてもいいというくらいに眠くて仕方ない。

 

夏にラップランドでみた庭一面のタンポポのことを思い出した。完全に白夜のラップランドだけど、タンポポはお昼が近づくにつれてどんどん花を開き、 そして夕方という時間帯になると、まだ空は真昼のように明るいのに、その花を閉じてしまうのだ。お昼には一面黄色い絨毯のようなタンポポの花が、夕方には 一斉に閉じ、そして緑色の葉とつぼみでもって辺りを急に静かな風景にしてしまう。明るい空の下に静かな夜の風景をみた感じだった。

かもめも急に目立つようになった。森の中のようなところでまで見かけるほど。ヘルシンキのあちこちにいる。

ヘルシンキではめったに見かけない外でくつろぐ猫。ちょっとかくれんぼしているみたいでかわいい。

5月になって白夜のような、長い長い夕焼け空の時間が続く。ヘルシンキの5月のはじめは夜の10時でこんな感じ。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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