10月 小さな学校の小さな楽しみに

全校生徒が30人いない小さな小さな学校を見学したことがある。そこはかつて近所の人たちがボランティアで建てたという、かわいらしい木造の校舎だった。給食のパンは手作りで、休み時間ともなると6年生が1年生の手をひいて一緒にサッカーをしたりしている。どの子もはにかみ屋さんだけれど、人なつこい。あっ、ブランコを女の子たちが圧倒的な勢いで占領していたのは笑ってしまった。男の子たちが興味ないのではない。女の子たちが十分に遊んでどこか他のところへ行ってくれるのを待っているのだ。さすが女性が強いと言われる国らしいというか……くくくっ。

校舎の裏には湖があって、校庭からは森が続いているそんな場所。森の中でとりたてて授業をするということはないらしいのだけれど、実は全校生徒で一緒にベリー摘みに行くという。一人ひとりがバケツをもって、森の中に入るのだそうだ。摘むのはリンゴンベリー。親に言われて摘むのは退屈だったりするけれど、お友達と一緒に森の中でベリーを摘むのはとっても楽しい。そうして摘んだベリーは給食室の大きな冷凍庫で保存されて、少しずつ冬の間の大切なビタミン源として給食に登場するのだそうだ。

自分が摘んだものが給食に登場したら、きっと食も進むだろうな。あとは初めて眺める日本人というのも食が進んだようだ。こぞって「おいしい顔」を見せるために、スープをお代わりしながら、目をクリクリさせた笑顔で、モグモグしながら私にアピールしてくれた。

ベリーの売買には税金がかからない。年金生活のお年寄りたちは「いい小遣い稼ぎになる」といって、自分たちが食べる以上のベリーを摘んで病院や公共の施設に売っていたりもする。小さな頃にベリー摘みのコツを体得しておくと、後のち役立つ技術になるのかもしれない。とくに今は忙しすぎてベリーは市場で買っちゃいますなんていう人が増えている、そんなご時世ですから。

リンゴンベリーは摘みやすい。一つところに固まって何粒もくっついていてくれるし、ポロポロっととれる。ヨーロッパで人気のフィンランドベリーといえばこれ。

夏は朝から晩まで人がいっぱいだった海辺も静かになった。座る人のいないベンチは寂しげで。

少しずつ色んなものが息をひそめるように感じられる季節。夕暮れ時の陽をうける秋色の草木には独特の時間が流れている。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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