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8月 贅沢ベリー

つい最近親しくなったレストランのご主人とおかみさん。レストランには食べ歩き歴40年、おいしいものに目がないアメリカ人のご夫婦が楽しそうに食事をしている姿を少し離れて嬉しそうに眺めているおかみさん。彼女を見つけたアメリカ人のご夫婦は、「自分の人生で一番おいしかった食事のひとつ」と繰り返しお礼をいっていた。心のこもった手料理、食材のベリーや茸は自分たちで採ってくる。

朝早くから夜中すぎまで働きどおしのご夫妻なのに、二人は自分たちの食事も手を抜かない。休みの日は夏小屋へ行って、森と湖と川に恵まれた場所ならではの新鮮な食材で、燻製やスープと、大自然にぴったりの食事を作るのが楽しくてしかたないのだそうだ。彼らの今年の大収穫は、クラウドベリーが群生している場所を発見したことだって。

クラウドベリーはお値段的にベリーの王様で、市場ではきちんとパック詰めで恭しく並べられている。北極圏を中心に、限られたところでしか育っていないからだ。ラップランドに行くと、私は友人から大量のクラウドベリーをいただくのだけれど、夫の喜びようといったら。ところが、どうも私の口には合わない。味というか酸味が中途半端な気がするし、そのせいか、それをおいしくしようという努力も創作意欲もわかないでいた。

ところがこのレストランのおかみさんがピンと来たというデザートを食べてびっくり。本当にシンプルなのに、酸味がひきたてられて美味しいのだ。クラウドベリーにうっすらキャラメルソースをからめてある。こういう塩ひとつまみ的な小さなことでこんなに味が変わるんだと感動してし まった。ゆっくり味わいすぎて、ベリーの下にあったバニラアイスがボウルからとろとろ溶けて流れだすくらいに、一口の余韻に浸ってしまった。

 

あまりに高価なベリーだから、この味を失わないようになんて考えてしまっていたんだろうな。こんなシンプルな工夫で、なんともびっくりだ。近々カヌーでザリガニ捕りに行こうという話しになった。運動の後の食事、どんな工夫が登場するのだろう。そうそう、そこにはマツタケも群生するらしい。

塩ひとつまみの工夫その一。芸術とフィンランド文化(サウナ)の融合。水着持参とあったけれど、相変わらず素っ裸で飛び込んでいる人が続出。

手の届かないところにわざわざ貼られたこれは…。芸術なのかいたずらなのか。ともかく塩ひとつまみの工夫で、ものすごい味わいになっている。

塩ひとつまみの工夫その三。クラウドベリーが本当に美味しくなったひととき。ちなみにキャラメルソースはクランベリーやリンゴンベリーを食べるときの定番なのだけれど。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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